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    あい動物病院の周りで起こった出来事や、気になるニュース、趣味のこと、思ったことなどを 気の向くままのんびり書いていきます。
    ブドウ中毒
    2010年12月03日 (金) | 編集 |
    日本小動物獣医学会誌の11月号にブドウ摂取後に急性腎不全を発症して死亡した犬の1例と題された報告がありました。

    当院HPのQ&A欄食べさせてはいけない食べ物は?にもちょこっと掲載していますが、すこし詳しくお話します。

    前述の報告のワンちゃんは、3歳オス、体重2.5kgのマルチーズちゃんで、デラウェアぶどう約70gを皮ごと食べてしまったそうです。その5時間後から激しく嘔吐し始めました。
    そして2日後に病院に連れて来られた時には虚脱状態でした。
    検査では重度の高窒素血症(尿毒症)を起こしていて、排尿が無いのにもかかわらず尿が少量しか貯まっていませんでした(乏尿)。
    点滴や利尿剤などの治療を施しましたが、ブドウを食べてから4日後に亡くなってしまいました。

    死後の腎臓の組織検査では腎臓の組織の一部(近位尿細管上皮)の著しい変性・壊死が見られました。

    デラウェア
    デアラウェア

    ブドウの産地フランスでは「犬にブドウを食べさせてはいけない!」とは有名な話だそうです。しかし世界中でブドウ中毒が注目を集め始めたのは比較的最近のことで、2001年にアメリカのGwaltney Brantらが紹介した10症例が初めての報告です。
    ただそれまでにそういう中毒が無かったのか、原因不明の急性腎不全として終わってしまっていたのかは分かりませんね。

    <原因>
    現在でもブドウの何が中毒を起こすのか研究が行われていますが、未だに不明です。その中毒を引き起こす摂取量は甚だバラつきが多く、症例のマルチーズちゃんより多くのブドウを食べても発症しないワンちゃんの報告もあるようです。
    また、不思議なことにこれはイヌにしか起こりません人やネコは平気なんです。

    <治療>
    ブドウを食べたと分かったら、即座に吐かせるのが第一です。まだ胃の中に残っているのなら胃洗浄をします。
    既に中毒症状が現れてきたら腎臓の機能が失われていますので、点滴や利尿剤はほぼ無効です。透析が唯一の治療と思われます。数週間の治療の末に運よく腎臓機能が回復してきたら、生存の可能性が出てきます。


    ●ネコにユリ
    ●イヌにブドウ


    どちらも、重度な腎不全を起こしますから、是非是非お気をつけ下さい。

    いんちょ

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