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    猫の巨大結腸症
    2017年04月07日 (金) | 編集 |
    他院から転院で来たネコちゃん、重度の便秘症でした。
    排便が上手く出来ず、掛かりつけ獣医さんでは便が詰まると手指による掻き出しをしていました。
    その度にネコちゃんはグッタリするとのことで当院に診察にきてくださいました。
    お腹を触診してみると巨大結腸症になっていました。

    巨大結腸症とは、結腸の持続的な拡張と運動性の低下がみられ、重度の慢性的な便秘を示す状態です。
    巨大結腸症

    原因は、結腸の動き(蠕動運動)の低下と、排泄路の狭窄に分けられます。

     <結腸の動きの低下>
     ・先天性機能不全
     ・内分泌疾患
     ・代謝性疾患
     ・行動異常
     ・長期の拡張
     ・神経の損傷
     ・脊髄奇形
     ・自律神経障害
     ・薬物

    <排泄路の狭窄>
     ・骨盤骨折
     ・結腸、直腸の腫瘍
     ・肛門周囲の疼痛性病変
     ・肛門狭窄
     ・会陰ヘルニア
     ・腸管外腫瘍による圧迫

    原因の如何を問わず、長期間糞便が停滞すると持続的に水分が吸収され、便は大きく硬くなり、結腸が拡張してしまいます。
    長期にわたる結腸の拡張が続くと、結腸の平滑筋や神経に不可逆的な変化が起こり、無力症となり、巨大結腸症となります。
    糞便の径が骨盤内腔径より大きくなると、自力での排便が出来なくなります。

    慢性症例では宿便からの細菌代謝産物の吸収などによる脱水や食欲不振などの全身症状も生じる可能性もあります。

    治療は、原因の除去が基本ですが、治療不可能な原因もあります。
    その場合は浣腸や手指での掻き出しによる宿便の除去、下剤や便軟化剤による再発の防止などの内科的治療を行います。
    それでも頻繁に繰り返す時には外科手術が選択肢に入ってきます。

    冒頭の転院ネコちゃんは、まずグリセリン浣腸による排泄を試みました。
    掛かり付け獣医さんでは浣腸はせずに掻き出しだけだったそうで効果に不安がありましたが、浣腸後はかなり大量に排便しました。
    浣腸後グッタリすることもなく、飼い主さんは喜んでいらっしゃいましたが、しばらくするとまた便が詰まってしまいます。

    予防的にグリセリンを飲ませてもらいましたが、グリセリンを飲むと高頻度で吐いてしまうようで効果がみられず、また便秘で浣腸の繰り返し。
    しかもグリセリンを飲ませようと準備するとネコちゃんはどこかに逃げでしまうという悲しい状況です。

    何度かの浣腸の後、飼い主さんはとうとう手術を決意されました。

                       ・・・・つづく

    いんちょ

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