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    あい動物病院の周りで起こった出来事や、気になるニュース、趣味のこと、思ったことなどを 気の向くままのんびり書いていきます。
    声帯の手術
    2015年08月19日 (水) | 編集 |
    先日、初診の方から一本の電話が病院に掛かって来ました。
    「そちらの病院では声帯切除の手術はやってますか?」

    当院では声帯除去手術はやっていますが、手術が手術なだけに安易にやることはありません。
    基本的にはまず吠えないしつけをしてもらいます。
    それでもダメな場合は吠えると振動する、あるいは嫌なニオイを噴射する首輪などのグッズを利用してもらいます。
    また、吠えても大丈夫な場所・部屋などに移動してもらったりもします。
    色々試してみてもどうしてもダメな場合、最終手段として声帯除去手術が選択されます。

    それらの話をして、
    「まずは診察をして、状況をお聞きしてから手術するかどうかを判断します」
    と言うと、2日後に連れて来られました。

    元気なミニチュアダックスさんで口輪をしてきました。
    飼い主さんはおばあさんですが、息子さんと思われる方が同伴されていました。
    大まかな状況は
     〇おばあさんが一人で飼っている
     〇なので、しつけができない
     〇すでに近所から苦情が来ている
     〇飼い主さんがストレスで参っている
    どうやら掛かりつけの病院があって何度か相談したみたいですが、そちらの先生は声帯除去手術には反対で施術してないようなのです。
    そこで困ってあちこちの病院に電話で相談したそうで。。。。

    私も出来ればそんな手術はしたくありません。
    人道的にもモラル的にもやるべき手術ではないと思います。
    しかし、吠えるワンコを抱えてとことん困っているとしたら、話は変わって来ます。
    下手をすれば最悪保健所に連れて行かれてしまいます。

    ホームページにも書いていますが、私はペットを飼うことで皆が幸せになって欲しいと思っています。
    ペットの虐待は論外ですが、ペットのために飼い主さんが不幸になることも避けたい。

    できればやりたくない手術ですが、飼い主さんのストレスを少しでも軽くしてあげられるならと手術することにしました。


    手術後10日の検診では手術の傷はとても綺麗になっていて、とても元気が良くてなにより。
    問題の声は風を切るようなかすれた声で「ハフッ!ハフッ!」と吠えていました。
    これならご近所迷惑にはならないでしょう。

    でも飼い主のおばあちゃんは、声が響かなくなった安堵と、可哀そうなことをしたという哀れみが混じったような複雑な表情をしていました。
    ハフハフ吠えるのを聞く度におばあちゃんの胸は痛むのかもしれません。
    はたしてダックスさんもおばあちゃんも幸せになれたのかどうか・・・・。


    おばあちゃんが犬を飼う時に「ダックスは吠える犬種だよ」と教えてくれる人がいたらこういう事態は避けられたのにね。

    いんちょ

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    テーマ:わんことの生活
    ジャンル:ペット