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    陰睾の腫瘍化
    2014年07月07日 (月) | 編集 |
    ワンちゃんの精巣(睾丸)は出生時にはお腹の中に潜在していて、出生後に陰嚢方向に引っ張られて精巣下降(精巣が陰嚢内に下降すること)してきます。
    ところが片側または両側の精巣が陰嚢内に下降しないで、お腹の中または鼠径部(内股の部分)に留まってしまうことを陰睾(潜在精巣)といいます。

     ※陰睾については2011年9月27日の当ブログ「陰睾」の回で少し詳しくお話ししています。そちらもご一読くださいませ。

    さて先日、内股が腫れてきたというチワワさんが転院でいらっしゃいました。
    元気も食欲もあり、腫物は痛くも痒くもないとのこと。
    早速診せていただくと、一見して”陰睾の腫瘍化”です。
    タマタマを確認してみると、やっぱり一つしか降りていません。
    「これは手術で摘出しなければなりません」
    と説明して、今日はその手術日でした。

    麻酔を掛けて毛刈りをします。

    陰睾の腫瘍化 (1)

    黄色矢印は正常な左睾丸で、赤矢印の部分が陰睾が腫瘍化してきたものです。

    陰睾の腫瘍化 (2)

    普通陰睾は正常睾丸より小さいもので、今までは鼠径部にあっても分からなかったでしょうけれど、腫瘍化してこんなに目立つようになってきました。

    浸潤性の高い腫瘍だと周囲組織と癒着したりしますが、今回は大丈夫でした。

    陰睾の腫瘍化 (3)
    例によって大丈夫な方だけクリックしてください

    これだけ大きさに違いがあります。
    しかし腫瘍化してない左の睾丸は、正常な睾丸より小さいようです。
    腫瘍化した睾丸からホルモンが過剰に産生されると、負のフィードバックが働いて反対側の機能が低下して萎縮してしまうことがありますが、この子はその現象がおきているようです。

    取り敢えずこのワンちゃんの手術は無事終了しました。
    あとは転移していないことを祈るばかりです。

    ところで、このワンちゃんの場合は”鼠径部陰睾丸”でしたから腫瘍化がすぐに分かりましたが、お腹の中”腹腔内陰睾”ですと簡単には発見できません。
    見つかった時には既に手遅れ、なんてこともありますから、陰睾の子は早めに手術をした方がいいですよ。

    いんちょ

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