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    あい動物病院の周りで起こった出来事や、気になるニュース、趣味のこと、思ったことなどを 気の向くままのんびり書いていきます。
    犬のジアルジア症
    2014年05月29日 (木) | 編集 |
    下痢をしているワンちゃんが来ました。
    食欲もあって元気もいいんだけど昨日から軟便になってしまったとのこと。

    早速検便をしてみると



    ウヨウヨ動く丸い物体が多数見られました。
    これはジアルジアという原虫です。

    ジアルジア

    染色して拡大するとこんなヤツです。
    レスラーのマスクのような、目無し帽のようなお茶目な感じですが、これは栄養型虫体と呼ばれています。
    栄養型虫体は上の動画のように糞便の中で盛んに動き回っていて見つけやすいのですが、少し時間が経つと動かなくなってしまい、染色でもしないと分からなくなってしまいます。

    正常便の中にもジアルジアが出てくることがありますが、シストという状態で出てくるので検出はかなり難しいです。

    ジアルジアシスト
    ジアルジアのシスト


    自宅でした下痢便を持ってきてもらって検便しても、栄養型虫体は既に動いていないので、怪しいと思った時はワンちゃんのお尻から直接便を取って調べます。

    最近ではジアルジアの検査キットが発売されたので検出率は非常に向上しました(感度95%以上、特異度99%以上)。

    ところでジアルジアは人と動物共通の感染症とも言われています。
    しかし、動物と人のジアルジアが同一なものかは不明なようです。

    ジアルジアのライフサイクル

    ジアルジアは栄養型虫体ではなく、シスト(外界抵抗力の強い殻に包まれた卵状のジアルジア)を口にすることで感染します。
    シストは、下痢ではない便の中に排泄され、土や水たまりなどの環境中に散らばります。
    犬がこの汚染された土をなめたり、水たまりの水を飲んだりすると、ジアルジアに感染します。

    治療はメトロニダゾール(商品名:フラジール)という抗原虫薬が用いられます。
    多頭飼育の場合は全頭投薬する必要があります。

    感染予防は「ひろい食いをさせない」「水たまりや河川や湖などの水を飲ませない」「便を放置しない」などが。
    また感染した場合は、ケージなど犬の身の回りの物を熱湯消毒する必要があります。

    しつこい反復性の下痢の際にはジアルジアの検査をしてみましょう。

    いんちょ

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